Technical - Electronics
2005年06月19日

電気の話 その1

 この前、テレビを見ていたときのこと、「100万ボルトの電流」なんていう言葉が耳に入ってきました。ずっと以前から思っていたことなんですが、こういった間違いって結構多いんですよね。ここではご覧の方がそういった間違えをおかして恥をかくことがないよう、電気に関する基本的な言葉についてお話をしたいと思います。

 ところで、最初に書いた「100万ボルトの電流」はどこが間違っているかお分かりでしょうか。これはボルトという電圧につく単位と電流 という言葉を結び付けているところが間違っています。いわば「長さが100キログラム」といっているようなものなのです。これならおかしいことは一目瞭然ですよね。というわけで ボルトという言葉を生かすなら「100万ボルトの電圧」、電流 を生かすなら「100万アンペアの電流」というのが正解になるわけです。

 ここで電圧と電流の関係について少しだけ述べておきましょう。まず電圧 ですが、これは簡単にいうと電気を流させる力の大きさになります。そして、電流が電気の流れている量になるわけです。これだけだと分かりにくいと思いますので、電気をトコロテンで例えてみると、トコロテンを突く力の大きさが電圧、一定時間あたりにでてくるトコロテンの量が電流に相当することになります。というわけで一般に電圧を大きくすれば、それに比例して電流も大きくなります。これがオームの法則といわれるものです。いかがですか。こうして考えれば電気も難しくないでしょ。

 その他の電気に関する言葉で一般的に使うものとしては電力(単位:ワット)や 電力量(単位:ワット時)といったものがあります。多少言葉としての正確さは欠きますが、これらは電気エネルギーの大きさを示すものです。ある瞬間でのエネルギーの大きさを示すのが電力であり、その量の積み重ねの合計を示すのが電力量だと考えればよいでしょう。ちなみに1ワットの電力を消費する電化製品を1時間使用したときの 電力量が1ワット時になります。

 ここまで電気に関する基本的な言葉についてふれてきましたが、いかがだったでしょう。この程度の基本を抑えておきさえすれば、一般的には言葉の使い方で恥をかくことはないかと思います。ちなみに「100万ボルトの電流」というフレーズついては別の視点からも突っ込むべきところはあるのですが、これは次の機会にしたいと思います。

Posted by とのす at 00:00 | Comment (0)

電気の話 その2

 前のコラムで「100万ボルトの電流」について電気に関する基本的な言葉についてふれてみました。今回は「100万ボルトの電流」という言葉について別の観点から考えてみようと思います。

 まず、この前も述べたように「100万ボルトの電流」のフレーズは全くの誤りです。このフレーズを正しくするためには、電圧の単位であるボルトを電流の単位であるアンペアにするか電圧を電流にするかになるでしょう。ここではとりあえず元のフレーズにより近い「100万ボルトの電圧」に直して考えてみるとします。

 では、この「100万ボルトの電圧」っていうのは一体どんなものなのでしょうか。まずはいろいろなものの電圧について調べてみるとしましょう。

乾電池1.5ボルト
家庭用コンセント100ボルト
電気ウナギおよそ800ボルト
静電気およそ数千ボルト~数万ボルト
1億ボルト程度

 ざっと調べてみたところこんな結果が出ました。やはりこうしてみても、雷の電圧っていうのは飛びぬけて大きいですね。ところで、これを見てあることに気付きませんか。そう、静電気の電圧は100万ボルトにはおよばないもののかなり大きな数字になっていますよね。実はこれが今回の話のポイントになるところなのです。

 静電気は家庭用電源に比べ数十倍から数百倍の電圧であるわけですから、電圧の大きさが与えるダメージの大きさと比例するのであれば、静電気のほうが家庭用の電源よりもそれにより与えられるダメージは大きくなるはずです。しかし。実際には家庭用の100ボルトでは場合によって感電死することがありますが、静電気で感電死するといったことはありません。つまり、ここでの電圧の大きさは必ずしもダメージの大きさに比例しないというわけです。

 実はダメージの大きさは電流の大きさとは大きな関連性をもちます。電流が大きければ大きいほど、ダメージは大きくなります。 でも、これを聞いて「あれっ?」と思った人がいるのではないでしょうか。オームの法則によると、「電圧の大きさと電流の大きさは比例の関係にある」はずです。それならば電圧が大きければ電流も大きくなり、与えるダメージもそれにしたがって大きくなるはずです。では何故そうならないのでしょう。

 それは電気の発生源でつくられた電圧のすべてがダメージをあたえるものにかかるのではないからです。例えばドアノブをさわろうとして静電気がパチンときた時には、ドアノブと指との間に電圧のほとんどがかかり、指を通して人体にかかる電圧というのはほとんどゼロになります。このように電圧の発生源と直接触れていない場合には、発生した電圧のほとんどは関係ない部分にかかることになるため、直接のダメージにはならないわけです。

 というわけで、「100万ボルトの電圧」っていうフレーズは何かすごいよう聞こえるかもしれませんが、実はそうではないのかもしれないのです。電圧の大きさが大きいから小さいからというのは危険の大きさと関わらないこともあるのです。

 ちなみに「100万アンペアの電流」というフレーズについてですが、雷の電流でも数万から数十万アンペアですから規模などから考えるとフレーズとしては適切ではないと思います。それに電流を一定値にするような形で電気をつくるのは非常に困難です。電気をつくることのできる生き物のなかで、電流を基準に電気を作ることのできるものはいません。こういった意味からもこのフレーズはやはり適切ではないでしょう。

Posted by とのす at 11:08 | Comment (2)
2005年06月22日

ICの話

 ICの発明で知られるJack Kilby氏が亡くなられたそうです。今日は氏にちなみ、ICについてお話をしようと思います。

 ところで、ICってなんでしょう。ICは英語で言うとIntegrated Circuit、日本語に直すと集積回路となります。簡単にいうと電子部品で構成した回路をぎゅっと固まりにしたものです。ちょっと分かりにくいですよね。では、ICがどんなものかを知るために、ICの種類について見てみましょう。ICはその構造、構成回路、回路規模にて、それぞれ分類することができます。

 構造ではICはモノシリックICとハイブリッドICに分類されます。モノシリックICは1つの半導体基盤上に回路を構成したもの、ハイブリッドICは基板上に複数の電子部品を実装して1つの電子部品としたものです。一般的にICというと、モノシリックICを示します。

 次に構成回路で分類すると、TTL(Transistor Transistor Logic)とMOS(Metal Oxide Semiconductor)に分けることができます。さらに、MOSはnMOS(negative MOS)、pMOS(positive MOS)、CMOS(complementary MOS)の3種類に分けることができます。TTLとMOSの違いはトランジスタにより回路が構成されるか、電界効果トランジスタ(FET=Field Effect Transistor)により回路が構成されるかになります。また、TTLはバイポーラ、MOSはユニポーラと呼ばれることもあります。これはTTLの場合、キャリア(半導体の中で電荷を運ぶもの)が正孔と電子の2種類あるのに対して、MOSの場合にはどちらか一方しかキャリアをもたないことに由来します。

 最後に回路規模による分類です。一般にICの回路規模は集積する電子部品の数で定義されます。それに従い分類すると、SSI(Small Scale Integration)、MSI(Medium Scale Integration)、LSI(Large Scale Integration)、VLSI(Very Large Scale Integration)、ULSI(Ultra Large Scale Integration)のように分類できます。最近はその上もあるようです。この辺は技術の進歩により、どんどん変わっていくところです。ちなみにSSIでは素子数は~100個程度、ULSIだと1千万個~程度といった回路規模になります。

 氏が発明したICはモノシリックのTTLのSSIでした。それは1958年、今から47年前のことです。今になって考えれば回路を1つの基盤上に作るという考えは自然な流れによるものだったのかもしれません。しかし、氏の発明したICが現在の半導体文明の始まる1つのきっかけになったことはまちがいない事実であると思います。

 というわけで、たまにはこんな薀蓄をたれてみてはいかがでしょうか。あなたを見る周りの目が変わるかもしれませんよ。いいほうに変わるかどうかは保証の限りではありませんけどね。

Posted by とのす at 22:18 | Comment (2)
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